コンデンサマイクの出力をH8CPUのADコンバータに取り込むための増幅器

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T,Kosaka CS TNCT

1. はじめに

この文書は,コンデンサマイクの出力をH8CPUのADコンバータに取り込むための増幅器について記述している。
キーポイントは
(1)コンデンサマイクの使い方
(2)1000倍増幅回路
(3)H8CPUのADコンバータの入力範囲は0V〜5Vである。増幅器の出力は2.5V中心にする。
(4)レールツーレール片電源OPアンプの活用
の4点である。

 

2. コンデンサマイク

コンデンサマイクロフォンとは図2.1に示すような小型のマイクロフォンである。図2.2のような用い方をするが,出力は数mVなので1000倍程度の電圧増幅が必要となる。

図2.1 コンデンサマイクロフォン

図2.2 コンデンサマイクロフォンの使い方

 

3. レールツーレール片電源OPアンプ

通常の±2電源OPアンプは,たとえば±15Vの電源を用いても±12V程度までしか出力が出ない。片電源のOPアンプだと+15V単一電源を用いたとき,0V〜12Vまたは3V〜12Vの出力しかない。もし5V単一電源のOPアンプを用いると,0.5V〜4V程度しか出力が得られない。レールツーレールとは出力がGND(0V)から電源電圧までを保証したOPアンプのことである。

LMC660(片電源OPアンプ四回路が1パッケージになったもの,図3.1参照),LMC662(2回路が1パッケージになったもの)などが使われる。

図3.1 OPアンプLMC660
「V-」をグランドにつなぐと片電源OPアンプとして使える

 

4. OPアンプを用いた反転増幅回路

通常の±2電源を供給しているOPアンプを用いた反転増幅器を図4.1に示す。OPアンプを用いた増幅器で,直感的に動作を理解するためのポイントは2箇所ある。
(1)OPアンプの+と−のついた2つの入力は同じ電圧に保たれる。
(2)OPアンプの+と−のついた2つの入力には電流は流れ込まないし,流れ出てもこない。

図4.1の回路では,P点は0Vに保たれる。入力電圧x[V]が加えられると,R1には電位差x[V]が生じ,x/R1の電流が左から右に流れる。もし出力電圧yが存在するとすれば,R2での電圧降下はyであり,R2に流れる電流は-y/R2となっているはずである。電流はOPアンプの+入力に流れ込まないので,R1に流れる電流とR2に流れる電流は等しいはずである。よってy=(-R2/R1)xの関係が得られる。

図4.1 OPアンプを用いた反転増幅回路

図4.2は図4.1のR2を「RとCの並列結合」に代えた増幅回路である。しかも交流理論によればコンデンサCは抵抗値が1/(jωC)の抵抗と考えることが出来る。ただしωは周波数,jは虚数単位である。そうすると「RとCの並列結合」は並列抵抗の合成と同等に考えられ,複素インピーダンスZとして表すことが出来る。出力振幅と入力振幅の関係を得るには両辺の絶対値をとればよい。ここで式中に現れる平方根の項は周波数特性を表し,LOWPASS(低域通過)フィルタの動作(図4.3参照)を表している。その結果この増幅回路は,電圧増幅とLOWPASSフィルタの両方の特性をもっている。


図4.2 「図4.1」のR2の部分を「RとCの並列結合」に代えた増幅回路

図4.3 低域通過フィルタの周波数特性
角周波数は対数で表わされている
gainはdBで表されている

 

5. 片電源動作

もし,入力が2.5Vを中心とし微小な電圧変化x[V]である時は,OPアンプの「-」入力にも2.5Vを入力する。この時出力電圧で2.5Vを中心とする変化分をyとする。この時,Pは2.5Vを保つので,図5.1に示すように2.5Vを中心とする変化分の振幅yは,2.5[V]を中心とする微小変化xの振幅を増幅したものとなり,やはり低域通過特性をもつこととなる。
H8CPUのADコンバータ入力の入力電圧は0V〜5Vなので,この増幅回路の出力である,2.5Vを中心とする電圧変化が入力されることは都合がよい。またこの回路は,出力を0V〜5Vに限れば,OPOアンプは片電源(5Vのみ供給)で動作できる。

図5.1 片電源動作の低域通過特性を持つ増幅器


6. 片電源OPアンプを用いたH8CPUのADコンバータ用のマイクアンプ

「5」の考え方で,片電源OPアンプを用いたH8CPUのADコンバータ用のマイクアンプを製作したものが図6.1の回路である。
ここでは低域通過フィルタのカットオフ角周波数(1/T=1/(RC))は1000rad/sec(=160Hz)である。
図6.1〜6.5は各部の動作の説明である。

図6.1 片電源OPアンプを用いたH8CPUのADコンバータ用のマイクアンプ

図6.2 コンデンサマイクへの電源供給と直流成分カットのコンデンサ
点PAでは5Vに微小なマイクロフォン出力電圧が乗っている

図6.3 コンデンサマイクの出力を2.5Vを中心とした微小電圧変化に変換
点PBでは2.5Vに微小なマイクロフォン出力電圧が乗っている

図6.4 片電源OPアンプを用いた2段重ねの増幅部分(2.5V中心,低域通過特性)
可変抵抗は倍率を変化させるために使われている
可変抵抗の左側の固定抵抗は可変抵抗の抵抗値が0になった時の保護である

図6.5 5Vから2.5Vを生成している部分
可変抵抗で微小な調整が出来るようになっている

 

7. 謝辞

この回路は2001年度卒業生の越智君,牧野君と開発した回路である。
本当はカットオフは1000rad/secではなく1000Hzにしたつもりだった。2002年度訂正
2002年度訂正版